Point 1
相続時に確認する税金
不動産相続では、相続した時点で発生する税金と、相続後に持ち続ける・売却することで発生する税金を分けて考えます。
まずは全体像を把握し、申告期限と名義変更の期限を同時に確認しましょう。
主な税金の全体像
| 税金 |
発生する場面 |
確認ポイント |
| 相続税 |
遺産総額が基礎控除を超える場合 |
相続開始を知った日の翌日から10か月以内に申告・納付します。 |
| 登録免許税 |
相続登記で名義を変更するとき |
相続による所有権移転登記は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。 |
| 固定資産税・都市計画税 |
相続後に不動産を所有している間 |
毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。共有の場合は代表者や負担割合も確認します。 |
| 不動産取得税 |
不動産を取得したとき |
相続による取得は原則として非課税です。遺贈や持分移転は内容により確認が必要です。 |
| 譲渡所得税・住民税 |
相続不動産を売却して利益が出た場合 |
取得費、所有期間、空き家特例、取得費加算の適用可否を売却前に確認します。 |
相続税だけで判断しない
相続税がかからないケースでも、登記費用、測量費、解体費、残置物処分費、売却時の税金が後から発生することがあります。相続後に住むのか、貸すのか、売るのかを決める前に、総額で比較することが大切です。
Point 2
相続税の基礎控除
相続税は、正味の遺産額が基礎控除額を超える場合に課税対象となります。
不動産は評価額が大きくなりやすいため、預貯金だけでなく土地・建物の評価を含めて確認します。
相続税の基礎控除額
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数で変わります
| 法定相続人 |
基礎控除額 |
| 1人 |
3,600万円 |
| 2人 |
4,200万円 |
| 3人 |
4,800万円 |
| 4人 |
5,400万円 |
正味の遺産額を整理する
相続税の判断では、遺産総額から債務、葬式費用、非課税財産などを差し引き、一定期間内の贈与財産を加算して正味の遺産額を確認します。不動産の評価額だけでなく、住宅ローン残債や借入金もあわせて整理します。
申告・納付期限
相続税の申告と納付は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内です。遺産分割がまとまらない場合でも期限は進むため、不動産の評価と方針決定は早めに進める必要があります。
Point 3
不動産の評価方法
相続税では、不動産を時価そのものではなく、相続税評価額をもとに計算します。
土地、建物、マンション、賃貸中の不動産で評価の考え方が変わるため、資料を分けて確認しましょう。
土地
土地は、路線価方式または倍率方式で評価します。路線価地域では、路線価に面積と補正率をかけて計算し、倍率地域では固定資産税評価額に一定の倍率をかけて評価します。
建物
家屋は、原則として固定資産税評価額に1.0を乗じた金額で評価します。固定資産税の納税通知書や評価証明書で確認できます。
マンション
マンションは、土地部分の敷地利用権と建物部分の区分所有権を分けて評価します。令和6年1月1日以後の居住用区分所有財産は、区分所有補正率の確認も必要です。
賃貸中の不動産
貸家、貸宅地、貸家建付地などは、借家権や借地権、賃貸割合に応じて評価額が調整される場合があります。賃貸借契約書、入居状況、賃料明細を確認します。
評価で確認する資料
- 固定資産税納税通知書
- 固定資産評価証明書
- 登記事項証明書
- 公図・地積測量図
- 賃貸借契約書
売却価格とは一致しません
相続税評価額と実際の売却価格は一致しないことがあります。相続税の申告判断と、売却した場合の手残りは別の計算になるため、両方の数字を並べて確認することが重要です。
Point 4
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、一定の宅地について相続税評価額を大きく減額できる制度です。
適用できるかどうかで相続税額が大きく変わるため、相続人、居住状況、事業利用、保有継続要件を確認します。
代表的な減額割合
| 区分 |
限度面積 |
減額割合 |
主な確認点 |
| 特定居住用宅地等 |
330㎡まで |
80% |
被相続人の自宅、取得者の居住・保有要件など |
| 特定事業用宅地等 |
400㎡まで |
80% |
事業承継、申告期限までの事業継続・保有など |
| 貸付事業用宅地等 |
200㎡まで |
50% |
賃貸利用の実態、取得者、保有継続など |
使える前提で進めない
この特例は効果が大きい一方、要件が細かく、誰が取得するか、相続開始前後の居住状況、申告期限までの保有状況で結論が変わります。遺産分割の前に、税理士などの専門家と適用可否を確認しましょう。
売却方針とも関係します
相続後すぐに売却する場合、特例の保有要件や売却時の税金に影響することがあります。売却の可否だけでなく、いつ売るのがよいか、誰の名義で進めるのがよいかも整理します。
Point 5
登録免許税と不動産取得税
不動産を相続したら、相続登記で名義を変更します。
相続による取得は不動産取得税が原則非課税ですが、登記には登録免許税と司法書士報酬などの実費がかかります。
登録免許税
相続による所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産税評価額の0.4%です。固定資産評価証明書をもとに税額を確認します。
相続登記の期限
令和6年4月1日から相続登記は義務化されています。相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
不動産取得税
相続による不動産取得は、原則として不動産取得税が非課税です。遺贈は内容や取得者によって扱いの確認が必要になるため、登記原因と相続人関係を整理します。
登記前に決めること
- 誰の名義で取得するか
- 共有にするか単独所有にするか
- 売却予定があるか
- 必要書類がそろっているか
Point 6
売却する場合の税金
相続した不動産を売却して利益が出ると、譲渡所得税・住民税の対象になります。
相続した時点の評価額ではなく、被相続人の取得費や取得時期を引き継いで計算する点に注意が必要です。
譲渡所得の基本式
譲渡所得の計算
売却価格 - 取得費 - 譲渡費用 - 特別控除 = 課税譲渡所得
取得費と取得時期を引き継ぐ
相続で取得した土地・建物を売る場合、取得費は被相続人が購入した金額や購入時の手数料をもとに計算します。所有期間も被相続人の取得時期を引き継ぎ、売却した年の1月1日時点で5年を超えるかを確認します。
取得費が分からない場合
先祖代々の土地や古い建物で購入資料がない場合、概算取得費として売却価格の5%相当額を取得費にできる場合があります。ただし、取得費が小さくなるため税額が大きくなりやすい点に注意します。
確認したい特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費加算
- 被相続人の居住用財産を売ったときの空き家特例
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 所有期間10年超の軽減税率
売却前に試算する
売却価格だけで判断せず、測量費、解体費、残置物処分費、仲介手数料、譲渡所得税まで含めて手元に残る金額を確認します。共有名義の場合は、各相続人の税金と入金額も分けて整理しましょう。