不動産を相続すると発生する「相続税」。
このページでは相続したときにまずすべきことや、不動産相続税の計算方法と相続税を減らす方法についてご案内します。
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不動産を相続する時に発生する税金
土地や家屋などの不動産を相続した時、一定の金額以上の財産を取得した場合は以下二つの税金を支払う必要が生じてきます。
●相続税
●登録免許税
相続税
亡くなった方の遺した財産を引き継ぐことで生じる税金が「相続税」です。
相続をしたすべての人にかかる税金ではなく、財産の相続税評価額の合計から基礎控除額を差し引いた額がプラスになった人に申告・納付の義務が生じます。
基礎控除額は次のとおりに算出します。
【3,000万円+600万円×法定相続人の数=基礎控除額】
たとえば、相続をする人が配偶者と子ども二人だった場合、基礎控除額は【3,000万円+600万円×3人=4,800万円】となります。
もし遺された財産の評価額合計が4,800万円よりも多ければ相続税の申告・納付義務が生じます。
法定相続人 | 1人 | 2人 | 3人 | 4人 | 5人 |
基礎控除額 | 3,600万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 5,400万円 | 6,000万円 |
相続税の申告・納付期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」と定められています。
たとえば1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が期限です。
この期限は「厳守」と考えておいたほうがいいでしょう。
なぜかというと、期限を守らないと「無申告加算税」をはじめとするさまざまなペナルティーが課せられてしまうからです。
なお、不動産の相続は大きな節税対策になります。
現金などに比べて相続税の負担軽減につながる特例や評価のルールがあるため有利になることが多いのです。
登録免許税
不動産を相続した時は、その名義を被相続人から相続人へと変更する必要があります。これを「相続登記」といいます。
相続登記を行う場合は「登録免許税」という税金を支払わなければなりません。税額は次のように算出します。
【相続登記をする不動産の固定資産税評価額×0.4%】
たとえば、5,000万円の評価額なら【5,000万円×0.4%=20万円】となります。
相続登記は義務付けられておらず、期限も決められていませんでした。
しかし税制改正によって令和6(2024)年までには義務化が始まる予定です。
この場合、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を行わないと10万円以下の過料の対象になります。
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不動産の相続税はどれくらいかかる?
不動産を相続した場合、多くの人が思いがちなのが「この不動産に対して、どれくらいの相続税がかかってくるのか」ではないでしょうか。
しかし相続税はすべての遺産(遺された財産)の評価額を算出してから計算していくため、不動産の相続税だけを個別に出すことはできません。
相続した不動産の評価額を一定のルールに従って算出し、そのほかの遺産の評価額と合わせたうえで相続税額を導き出していくのです。
ここからは、その評価額の算出方法を見ていくことにしましょう。
相続税は遺産総額を出してから計算するのが基本
相続税は遺産総額を出してから計算をすることが基本で、不動産の相続税だけを抜き出してくることはできません。
たとえば「この不動産の評価額は5,000万円だから、税率20%で控除額200万円を差し引いて、800万円が相続税」ということにはならないのです。
もし、不動産のほかに現金1億円があれば、1億5,000万円を元にして計算していき、各相続人の取得額に応じて按分していくという形をとります。
遺産の総額を出すには不動産の評価額を計算する必要があります。
この場合、不動産は土地と家屋それぞれに異なる方法で算出していくことになります。
土地の評価方法
土地の評価方法としては「路線価方式」と「倍率方式」があります。
【路線価方式】
路線価とは「道路に面する土地1㎡あたりの評価額」のことを指します。
この路線価に基づいて土地を評価する方法が路線価方式というわけです。路線価方式による土地の相続税評価額は次の計算式を用います。
【路線価×各種補正率×土地面積】
【倍率方式】
路線価が定められていない地域に関する土地の評価方式が「倍率方式」です。この方式による土地の相続税評価額は次の計算式を用います。
【固定資産税評価額×倍率】
「固定資産税評価額」とは市町村から毎年送られてくる「固定資産税課税明細」に記載されています。明細書の土地の「価格」の欄の額が固定資産税評価額です。
なお、路線価と倍率については国税庁のホームページで確認することができます。
参考:国税庁ホームページ『路線価図・評価倍率表』
建物の評価方法
家屋(建物)の相続税評価額の算出方法は簡単です。毎年市町村から送られてくる「固定資産税課税明細」に記載されている額が固定資産税評価額となります。たとえば価格に「2,000万円」と記載されていた場合は相続税評価額は2,000万円です。戸建てであれマンションであれ、これは変わりません。
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特例や財産の状況により相続税を減らすこともできる
不動産の相続税を減らすための特例や、有効に活用できる制度について説明します。
「小規模宅地等の特例」を使う
不動産の相続に評価額を軽減する特例や評価のルールがあります。その代表的なものが「小規模宅地等の特例」です。
「小規模宅地等の特例」とは、相続した土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。
たとえば土地の相続税評価額が4,000万円だった場合、この特例を使うことで800万円にまで引き下げることも可能です(ただし適用には要件があります)。
その意味でも、土地を相続する方にとってはぜひ活用したい特例です。
「配偶者の税額の軽減」を使う
また「配偶者の税額の軽減」という有利な控除もあります。 配偶者の税額の軽減は被相続人の配偶者が相続した財産に対して適用されるもので、相続税評価額に対して1億6,000万円(または法定相続分)までは相続税が課税されません。 たとえば、相続人が配偶者のみだった場合、基礎控除額は【3,000万円+600万円×1人】で3,600万円となります。これに対して相続した財産の評価額が不動産を含めて1億5,000万円だったとすると、基礎控除額を上回り、通常は相続税が課税されます。しかし、配偶者が相続した財産1億5,000万円は1億6,000万円より少ないため、相続税の支払いは不要ということになります(ただし、この特例は申告が条件となっていますから申告義務が生じます)。
土地を貸している場合は評価額が下がる
もし、相続した土地が誰かに貸しているものだったとした場合、その相続税評価額は、貸していない場合に比べて低くなります。この場合の土地の相続税評価額は次の計算式を用います。
【更地の評価額×(1−借地権割合)】
ここでいう「更地」とは、土地を貸していない(借地権のない)状態の土地を意味します。その評価額は上記の「路線価方式」または「倍率方式」で調べます。 一方「借地権割合」ですが、これは国税庁が地域ごとに30〜90%の間で定めており、一般的に土地の利用価値が高いエリアは借地権割合も高い傾向があります。
建築中の場合は評価額が建築費の7割に
家屋の建築中に被相続人が亡くなった場合でも、その家屋は相続税の対象となります。 その際の相続税評価額の計算式は次に示すとおりです。
【費用原価の額×70%】
「費用原価の額」とは、亡くなった日までにかかった建築費のことを指します。
相続した不動産の売却基礎知識