
不動産を売却するときには、さまざまな費用が発生します。
不動産会社に支払う仲介手数料や税金の他、不動産の状態などによって生じる様々な費用があり、場合によっては控除の対象になることもあります。
このページでは、不動産の売却にかかる諸費用について詳しく解説します。
1
仲介手数料
まずは不動産会社に支払う仲介手数料が発生する場合があります。
不動産会社は、不動産売買の仲介業務として不動産情報サイトに物件情報を載せたり、チラシを作成してポストに配布したり、購入希望者の物件見学に立ち合ったりするなどの販売活動を行います。
そういった販売活動や立ち会いに伴い発生する費用や人件費、報酬などを仲介手数料として支払います。
仲介手数料は、売買契約が成立した時に半分、物件の引き渡し完了時に残りの半分を支払うのが一般的です。
※ただし、売買契約締結後に売主または買主の事情で契約を解除する場合(手付解除)や、売買代金の未払いなどによる契約違反となった場合(債務不履行による解除)は、結果として売買は成立しませんが、仲介手数料を支払う必要があります。
また、測量や建物の解体、荷物の保管やゴミの廃棄などの費用も仲介手数料には含まれず、別途費用が必要になります。
セルフリジェネレーションは、売却時の手数料を最大無料でご案内いたします
仲介手数料の計算式
仲介手数料は、宅地建物取引業法(宅建業法)という法律によって「金額の上限」が定められています。計算式は以下の通りです。
売買価格 | 仲介手数料の上限 |
200万円以下の金額 | 売却価格 × 5.5% |
200万円を超えて400万円以下の金額 | 売却価格 × 4.4% |
400万円を超える金額 | 売却価格 × 3.3% |
※2018年1月1日の宅建業法一部改正により、400万円以下の不動産売買の仲介手数料は上限が18万円になりました。この上限を適用する場合は、媒介契約時に売主に説明し、合意する必要があります。
なお、売却価格が400万円を超える場合は、区分に関係なく仲介手数料(上限額)が速算できる以下の式を使用します。
【売却価格400万円超の場合の速算式】
仲介手数料=売却価格×3.3%+6.6万円
代表的な売却価格の仲介手数料の早見表は以下のとおりです。
売却価格 | 仲介手数料(税抜) | 消費税 | 仲介手数料(税込) |
1,000万円の場合 | 36万円 | 3万円6,000円 | 39万円6,000円 |
3,000万円の場合 | 96万円 | 9万円6,000円 | 105万円6,000円 |
5,000万円の場合 | 156万円 | 15万円6,000円 | 171万円6,000円 |
5,1億円の場合 | 306万円 | 30万円6,000円 | 336万円6,000円 |
2
譲渡所得税
所有している土地や建物などの不動産を売却して得られた利益のことを「譲渡所得」といいます。
その譲渡所得には所得税や住民税がかかります。これらを総称して譲渡所得税と呼ばれることもありますが、税金の名称は所得税と住民税です。
譲渡所得税は単純に不動産の売却金額にかかるものではありません。その不動産を買った時に価格や費用がかかっていますし、売る時にも費用がかかっています。
それらの価格や費用を売却価格から差し引いたものが譲渡所得です。つまり、売却によって得た利益(譲渡所得)に対してかかるものなのです。譲渡所得が発生しなければ税金も発生しません。
具体的には、譲渡所得は「不動産の売却価格」から「不動産の購入時にかかった費用(取得費)」と「売却にかかった費用(譲渡費用)」を引いて算出します。計算式は以下となります。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
取得費は、不動産の購入にかかった費用のことです。
売却する土地・建物の購入代金や建築代金、購入手数料、測量費、整地費、建物解体費、設備費、改良費などです。
また、不動産を購入時に納めた登記費用、不動産取得税、印紙税や、借り主に支払った立ち退き料、不動産を購入するために借りた資金の利子なども含まれます。
ただし、既に事業所得などの必要経費に算入された事業用不動産の場合は含まれません。
譲渡費用は、不動産の売却のためにかかった費用のことです。前述した仲介手数料や印紙税、立退料、建物解体費などが譲渡費用に含まれます。
譲渡費用は売却するために直接使った費用なので、修繕費や固定資産税などは含まれません。
譲渡所得にかかる税金
譲渡所得には譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は正式名称ではなく、譲渡所得にかかる所得税、住民税を合わせたものを指します。
所得税は国に納める国税、住民税は都道府県や市区町村などに納める地方税です。また、所得税には復興特別所得税が含まれます。
復興特別所得税は2011年の東日本大震災の復興支援の財源として使われる税金で、2037年まで所得税に加算される2.1%の加算分を指します。
所有期間による税率の違い
譲渡所得税の税率は、不動産を所有していた期間が5年以下か、5年超かによって異なります。
所有期間が5年以下の不動産を売却した場合は「短期譲渡所得」、5年超であれば「長期譲渡所得」となり、税率は長期譲渡所得の方が低くなっています。
短期の売買で税率が高く設定されているのは、バブル経済期のころのように投機目的で土地を短期売買することを抑制する目的があるためです。
所有期間は、売却した年の1月1日時点を基準として5年以下か5年超かを決めます。
例えば、2016年3月に取得し、2021年4月に売却すると、実際の所有期間は5年を超えます。
しかし、税務上の所有期間は売却した年(2021年)の1月1日にさかのぼって判断するため、所有期間は4年となり、短期譲渡所得になります。
そうなると高い税率で課税されるので、不動産の売却を考えるときは売却時期には注意が必要です。
所得種類 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
短期譲渡所得 | 5年以下の土地・建物 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超の土地・建物 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
3
印紙税
印紙税は広範な文書に負担を求める文書課税のことです。
不動産を売却するとき、売主と買主で交わす不動産売買契約書に印紙を貼り、消印をすることで「納税した」ことになります。
印紙税の金額は不動産の売買金額によって変わります。
軽減税率の適用
印紙税は売却金額に応じて高くなります。
また、印紙税は消費増税にともない2022年3月31日までは軽減税額が適用されます。
税額は以下の表の通りです。
例えば、売買価格が3,000万円の不動産を売却する不動産売買契約書を作成した場合は、契約書に1万円の印紙を貼ります。
契約金額 | 軽減後の税額 |
21万円未満 | 非課税 |
21万円以上、50万円以下の場合 | 200円 |
250万円を超え、100万円以下の場合 | 500円 |
2100万円を超え、500万円以下の場合 | 1000円 |
2500万円を超え、1000万円以下の場合 | 5000円 |
21000万円を超え、5000万円以下の場合 | 1万円 |
25000万円を超え、1億円以下の場合 | 3万円 |
21億円を超え、5億円以下の場合 | 6万円 |
25億円を超え、10億円以下の場合 | 16万円 |
210億円を超え、50億円以下の場合 | 32万円 |
250億円超 | 48万円 |
2契約金額の記載のないもの | 200円 |
印紙税を納めなかった場合
印紙税は税金ですので、印紙を貼って消印しなければ納税していないとみなされます。
印紙税を納付しなかった場合は、印紙税の額と、その2倍の額の合計額(つまり、納めるはずだった税額の3倍)の税金を過怠税として徴収されます。
4
住宅ローン返済手数料
住宅ローン返済中の不動産を売却する場合、住宅ローンを一括返済する必要があります。
銀行などの金融機関で住宅ローンを一括返済する場合、手数料が必要な場合があります。
各金融機関によって異なりますが、手数料は1万円~3万円程度が目安で、一般的に、一括返済の手数料は一部繰上返済の手数料より高く設定されています。
なぜ住宅ローンの一括返済が必要かというと、住宅ローン返済中の不動産には「抵当権」が登記されているからです。
これは住宅ローンの借入先の金融機関が、融資と引き換えに融資した不動産を担保にした登記で、この抵当権を外さないと、住宅ローン返済中の不動産は売却することができません。
司法書士に依頼すると手続きをしてくれます。
5
登記費用
自住宅ローンを完済したら、抵当権を抹消しましょう。
抵当権をそのままにしておくと必要書類を紛失してしまうリスクがあり、売却や融資、相続の際のトラブルのもとにもなりますので、抹消は早めに行いましょう。
登記簿上の抵当権を抹消するためには手続きが必要で、その際に登記費用が発生します。
※登記簿(登記簿謄本)とは…不動産の種類、構造、所有者などを記した帳簿のことで、不動産の所有者を明確にすることによって不動産売買を安全で円滑にするための書類です。
抵当権抹消の費用は、手続きを依頼する司法書士への手数料を含めて5,000円~2万円が目安です。
個人で手続きすることも可能ですが、非常に複雑な作業となりますので、司法書士への依頼をおすすめします。
6
その他の費用
不動産の売却では、上記以外にも費用がかかる場合があります。
ハウスクリーニング費用
売却する物件をきれいにしておくことで、買い手が見つかりやすくなり、値下げ交渉を受けにくくなるという効果が期待できます。
クリーニングする場所としては、浴室と洗面台、トイレ、キッチンなどの水回りとレンジフード、床、壁紙などが挙げられます。
これらは内見時に購入検討者がよく見る場所で、不動産全体の印象に影響します。
そのため、自分で掃除するよりもプロに徹底的に掃除してもらった方がよい場所といえます。
クリーニング費用は家の広さや状態、掃除する場所の数などによりますが、3万円~10万円くらいが目安です。
測量費用
測量はその土地の「境界」と「面積」を明らかにするために行います。
土地の境界が明確になれば正確な面積が算出できるので、登記簿の面積との相違などによる売買契約・引き渡し後のトラブル防止にもなります。
また、境界を明確にすることで隣地とのトラブル予防になります。トラブルの可能性が低ければ不動産の価値は高くなる傾向にあり、スムーズな売却につながります。
測量の費用は、市や国の立ち合いが必要かどうかによって変わり、30~100万円程度と差があります。
解体費用
一戸建ての売却では、築年数が古い建物を解体して更地にして売るほうが高く売れることがあります。
建物の解体費用は建物の構造によって変わり、1坪あたり、木造住宅で3~4万円、鉄骨住宅で4~5万円、RC住宅で5~6万円くらいが目安です。
1坪あたりの解体費用と建物の床面積を掛け算して、解体費用の総額の目安が把握できます。
家財等の処分費用
不動産を引き渡す時や解体する時は家の中を空にしておくのが基本です。そのため、家財などの処分費用も考慮しておく必要があります。
不用品は、自分で自治体の粗大ゴミ収集所に持ち込むなどして処分する方法がもっとも安くすみます。
ただし、多くの自治体では粗大ゴミの処分は有料です。また、回収にきてもらう場合、処分可能な日が指定されていることもあります。
そのため、効率よく処分する方法として、片付け専門の会社などに依頼することもできます。
不用品処分の依頼費用は、処分するものの量によりますが、一戸建ての場合で15万円~50万円程度が目安です。
少しでも費用を抑えられるように、無料で処分できる不用品などを計画的に捨てていくことが大事です。