離婚で共有名義の住宅ローンはどうする?ローンは夫のみにできるのか

最近では共働きをする方も増えているので、それと共に共有名義でローンを組む方も増加しています。
しかし、離婚をする際に住宅ローンが残っている場合、さまざまな問題があります。
家を売却しても、どちらかが住み続けても、住宅ローンの共有名義をそのままにするのは危険です。

後々トラブルが起こりかねないので、しっかり話し合いをしてどのようにするのかを明確にしておく必要があります。
そこで、今回は離婚時に共有名義の住宅ローンがある場合はどうしたらいいのかについて紹介していきます。

□離婚した共有名義の対象となる財産分与はどれ?

不動産を財産分与する方法としては、大きく2つの方法があります。
ここでは、その方法について紹介します。

*不動産を片方が買い取りをして、半分を現金で支払う

この方法では、生活環境を変えることなく、引っ越す必要もありません。
子供は転校すると精神的に負担にもなるので、片方が家を買い取るケースはよくあります。
例えば、夫が4,000万円の家を引き取る場合、妻に2,000万円支払う必要があります。

しかし、ローンや税金などの問題でトラブルが起こることがあります。
そのため、弁護士や税理士に相談することをおすすめします。

*売却して現金化する

金融機関は2人で返済することを前提としてローンを組んでいます。
そのため、その名義を片方のみに変更する際は、支払い能力を認めてもらう必要があります。

ローン残債がない場合は、不動産自体の名義変更は可能です、
しかし、残債がある場合は名義変更するのが困難です。
そのため、売却後にローンを完済し、財産が残った場合は残額を分配する方法が最も容易で、トラブルも起きにくいでしょう。

□離婚時に住宅ローンが共有名義になっていたらどうなる?

離婚時に住宅ローンが共有名義になっている場合、さまざまな問題が発生します。
具体的にどのようなトラブルがあるのかを見ていきましょう。

*スムーズに家を賃貸・売却できない

離婚後にどちらも家に住み続けない場合、住宅ローンの残債がある家を賃貸にすることは認められていません。
また、共有名義になっていると、家を売却する相手の承諾が必要です。
相手が承諾してくれない場合や話し合いをしても意見がまとまらない場合、トラブルにつながりやすいので注意しましょう。

*後から共有名義を解消する際や相続時に問題が発生しやすい

離婚後に共有名義を解消したいと思っても、住宅ローンが残っている状態では名義を変更することが難しいです。
離婚して数年経つと相手と連絡を取ることができず、手続きがスムーズにできなくなることもあるので注意が必要です。

また、共有名義のままでどちらかが亡くなると、共有持分を亡くなった側の遺族が相続することになります。
その際、相続人が多ければ手続きも複雑になります。

例えば、亡くなった側に別の配偶者と子供が3人いた場合、その4人と元妻(もしくは元夫)の5人が共有名義人となります。
この場合、売却する際に4人の承諾が必要なので、手続きが難しくなるのです。

□離婚時に共有名義の家を売却するメリット・デメリットとは

離婚時に住宅ローンが共有名義になっている際に起こる問題を紹介しましたが、売却を考えている方もいらっしゃるでしょう。
そこで、共有名義の家を売却するメリット・デメリットを紹介します。

*メリット

売却する大きなメリットは、固定資産や住宅ローンを支払い続ける必要がなくなることです。
高く売却できた場合、新生活の資金としても活用できます。

また、名義変更しなかった場合、将来の相続でトラブルが起きることが予想されます。
遺産相続時に離婚が原因で揉め事を起こしたくない場合、共有名義は解消しましょう。
売却するタイミングとしては、離婚前がベストです。

*デメリット

デメリットは、家が高く売却できず、負債が残ってしまった場合に、離婚後もそれぞれが返済し続ける必要があります。
しかし、住宅ローンを全額返済するのに比べると負担は軽減できます。

また、家を売却すると引っ越しする必要があります。
引っ越しにも費用がかかりますし、生活環境も変わってしまいます。
そのような方にとっては、デメリットと感じるでしょう。

□離婚時に家を売却する方法

家を売却するには、まずアンダーローンかオーバーローンかを知る必要があります。
どちらになるかによって、売却方法は異なります。

*アンダーローン

アンダーローンとは、家の時価が住宅ローンの残債を上回ることを言います。
この場合、家を売却すると利益が発生するので、その利益でローンを完済し、残りの金額を2人で分ければ完了です。
特に目立った難しい手続きもないので、比較的に簡単に行えます。

この際、住宅ローンを組んだ際の持ち分割合に関係なく、離婚時の財産分与は半分にするように決められているので、気を付けましょう。
たとえ住宅ローンを夫が多く支払っていても、残った利益の金額は折半にするのが原則となっています。

*オーバーローン

オーバーローンは、アンダーローンとは反対で家の時価が住宅ローンの残債を下回ることを言います。
オーバーローンになってしまうと、家を売却したとしても住宅ローンを完済できません。
貯蓄から残りを一括返済できるならそれは問題ありません。

しかし、その方法が難しい場合は、金融機関から売却の承認が下りない可能性が高いため、任意売却を検討しなければなりません。

任意売却とは、住宅ローンを組んだ金融機関からの承諾を得て、家の抵当権を外してもらって売却する方法です。
売却金はローンの返済に充て、売却金で返済できない分は金融機関と相談しながら分割で支払うことになります。
しかし、任意売却は個人の信用情報に傷が付く行為になるので決断は慎重に行いましょう。

□住宅ローンは夫のみにして単独名義に変更する方法

共有名義を解消し、単独名義にしたい場合、どうすれば良いのでしょうか。
ここでは、住宅ローンがない場合とある場合に分けて紹介します。

*住宅ローンがない場合

住宅ローンが残っていない場合は、共有持分を財産分与するのは簡単にできます。
離婚協議書や財産分与契約書を作成し、財産分与に基づいて共有名義から単独名義へ不動産登記をすれば完了です。

家を譲ってもらう側は、代償金として相手に家の価値の半分の額を支払う必要があります。
そうすることで、公平に財産分与できるからです。
しかし、夫婦両者の合意があれば代償金を支払うことなく相手に家をすべて分与することもできます。

*住宅ローンがある場合

住宅ローンが残っている場合は、なかなか簡単に単独名義に変更できません。
住宅ローンを利用している場合、借入先の金融機関の承諾なしに単独名義にすると住宅ローンの契約違反になるからです。
違反となると残っている住宅ローンを一括で支払うように指示される可能性もあります。

例えば、夫婦で住宅ローンを組み、夫が妻に家を分与したいと思っていても、夫名義の住宅ローンを完済するまでは妻に名義変更することはできません。
住宅ローンを完済するにはどこからかお金を工面して支払わなければいけません。

よく採用される方法としては、実家からお金を出してもらい完済する方法とローンの借り換えをして相手名義のローンを完済し、住宅ローン全額を自分の名義にする方法の2つです。
この方法を採用できる場合は、住宅ローンが残っていたとしても夫のローンを完済できるので家の名義を妻に変更できます。
その逆も然りです。

また、連帯保証人や連帯債務の関係にある場合は、代わりとなる別の人でなくても土地や建物などの物的担保を入れることによって外してもらうこともできます。
しかし、以上のような方法ができない場合はローンを完済するまで共有名義でいるしか方法はありません。

□離婚後もこれまでの家で暮らしたい場合はどうしたらいい?

1.名義人が住む

単独で住宅ローンがある家にその名義人が住む場合は、これまでと変わらず名義人が住宅ローンを返済し続けることで住み続けられます。
しかし、配偶者が住宅ローンの連帯保証人となっている場合は、注意が必要です。

もし、名義人の返済が滞った場合、離婚後も連帯保証人である配偶者に支払いの義務が生じるからです。
そのため、配偶者が連帯保証人となっている場合、連帯保証人から外れておく必要があります。
その場合は、まず金融機関に相談することから始めましょう。

2.名義人ではない方が住む

名義人ではない人が住み続ける場合は、まず金融機関に了承を得る必要があります。
また、名義人が住まない場合でも名義人がローンを返済し続けなければなりません。

その場合、名義人がローンを支払えなくなったり、支払わなくなったりした際、立ち退きを迫られる危険性があります。
名義人を変更せずに、実際の費用は居住する元配偶者が支払うことも可能ですが、ローンを完済してもその家が元配偶者の財産にはならない可能性が高いので注意しましょう。

3.共有名義でどちらかが住む

共有名義の家で離婚後もどちらかが住む場合でも、名義人でない方が住む場合と同じリスクを考慮する必要があります。
共有名義の両者が今までと同じように住宅ローンを支払うのか、どちらかの支払いが滞ったときはどうするのかなど、考えられるリスクを挙げ、解決策を明確にしておく必要があります。
曖昧にしたままで住み続けるのは危険なので避けましょう。

□まとめ

住宅ローンの共有名義は、家を売却するのか、そのまま済み続けるのか、住宅ローンの有無などによって適切な対応が変わります。
離婚すると決まったときに、ご自身がどのケースになるのかをチェックしましょう。
場合によっては、手続きが難しくなることもあるので、あらゆる対応を予測しておく必要があります。

さまざまなトラブルが起きないようにするためにも、離婚時に住宅ローンをどうするかは早めに結論を付けられるようにしましょう。

この記事の監修者

三好 海斗(みよし かいと)

株式会社セルフリジェネレーション 代表
宅地建物取引士
不動産賃貸経営管理士
既存住宅アドバイザー
1988年生まれの福島県出身。不動産業歴は14年。不動産賃貸・売買仲介をはじめ、投資用不動産、中古不動産仕入れ再販、中古不動産×リノベーションなど様々な不動産企業で経験を積み、 株式会社セルフリジェネレーションを設立。2021年にメディア取材や自社サービスや取組みが各メディア(55社の媒体)へ掲載される。