任意売却と自己破産の違いや関係性について紹介します!

住宅を購入する際、ほとんどの方が住宅ローンを組むでしょう。
住宅ローンは、何十年もかけて返済するものなので、ローンを組む際にしっかりと計画を立てた上で借りる必要があります。
しかし、中には思いもよらないトラブルで収入が減少し、返済が難しくなる方もいらっしゃるでしょう。

その場合、よくある選択肢として挙げられるのが任意売却や自己破産です。
この2つは、よく混同されてしまいがちですが、内容は異なります。
今回は、任意売却と自己破産の違いや両者の関係性について紹介します。

□任意売却と自己破産の違いとは?

任意売却と自己破産は、密接な関係にありますが、明確な違いがあります。
任意売却は、抵当権がついている不動産の処分の方法の1つですが、自己破産は返済できなくなった債務処理方法の1つです。

住宅を所有しているときに債務が返済できなくなると、選択肢として任意売却と自己破産があります。
しかし、「不動産の処分」と「借金の処理」という大きな手続きの違いがあることをしっかり把握しておくことが大切です。

*任意売却と自己破産は密接な関係

任意売却と自己破産は手続きに大きな違いがあるとお伝えしましたが、両者ともに借金返済ができなくなったタイミングで問題になるので、密接な関係にあると言えます。

任意売却をしたとしても、債務が残るケースは多いため、残された債務を支払える状況でないことも多々あります。
そこで、自己破産となるケースも珍しくありません。
住宅問題を任意売却で解決し、債務処理を自己破産で行うこともあるため、任意売却と自己破産は密な関係にあると言えます。

□自己破産に伴う不動産売却のタイミングはいつ?

自己破産に伴い不動産を売却する場合、自己破産後と自己破産前のどちらかのタイミングで行います。

*自己破産後

1.裁判所が選任した破産管財人が不動産の売却を行う

破産者が自己破産する際、不動産などの高額資産を所有しているとそれは「管財事件」として扱われます。
管財事件とは、ある一定よりも財産を所有している場合の破産手続きのことで、破産者は予納金を納めて破産手続きを依頼します。

管財事件となった場合、裁判所が選任した破産管財人が資産状況を調べた上で売却を行います。

2.破産管財人の選定がなく、自分で売却する

個人による自己破産の場合は、所有する資産の内容次第で管財事件とされないケースもあります。
管財事件のように破産管財人が破産財団を立ち上げて不動産を売却する必要がないので、短期間で完了します。

*自己破産前

自己破産前であれば財産の処分は自分で自由にできるので、自分自身で売却することができます。
所有している不動産がオーバーローンではない場合、基本的に破産管財人によって不動産を売却し、売却益が債権者に支払われます、

不動産を所有し、破産を申し立てる場合、予納金が発生します。
予納金の金額は数十万円単位となるため、経済的な負担が大きくなります。
そのため、事前に不動産の売却を終え、管財事件として扱われないようにすることができます。

ただし、予め売却すると「財産隠し」として判断され、「免責不許可事由」となってしまい、負債の免除がなくなる可能性もあるので注意しましょう。
財産隠しではないことを証明するには、破産管財人が売却を行った場合と同じくらいの金額が配当原資として用意されていて、かつ破産管財人が売却を行った際の金額を不動産鑑定や審査書で証明することが求められます。

自分自身で不動産を売却した場合、破産申し立てから約2年遡って調べられるので、きちんと対策した上で売却を進めましょう。

□自己破産をせずに任意売却のみでローンを完済することは可能なのか

自己破産してしまうと、最低5年間はローンの借り入れやクレジットカードの作成などができなくなります。
また、所有しているもののうち20万円以上の価値がある財産もすべて精算しなければなりません。
さらに、生命保険や学資保険、自動車などもその対象内です。
このように、自己破産してしまうとさまざまな弊害が生じるので、避けたいという方は多いのではないでしょうか。
そこで、ここでは自己破産することなく任意売却のみでローンは完済できるのかについて解説します。

*交渉次第で完済することはできるが、難しい

任意売却のみで完済できるかは、任意売却でどれくらいの値段で売却できるかが大きなポイントです。
購入希望者と交渉し、できるだけ高い値段で売却できればその分ローンの残りも少なくなり、完済できる可能性も高くなります。

しかし、不動産を購入したい人もやはりできるだけ安く購入したいと考えているため、売却価格を上げたいと交渉しても応じてくれる可能性は低いです。
加えて、周囲の同条件の物件より高すぎる価格を設定すると、売却自体もできなくなってしまいます。

また、毎月の返済額を下げてもらい、完済する方法もありますが、すでに任意売却をするほどの状況だと金融機関からの信頼も揺らいでしまいます。
そのため、返済額を減らしてもらうことも難しいでしょう。

*月の返済を増やして自己破産を免れたケースもある

任意売却によって、ローンの残高は少なくなります。
そこから毎月の返済額を減らしてもらうことは難しいですが、反対にローンの返済額を増やして返済期間を短くするという交渉であれば、金融機関が応じてくれる可能性は高いです。

金融機関がこの要望に応えてくれれば、ローンを完済するために自己破産する必要もなくなります。
すでに苦しんでいたローンの返済額を増やすことも難しいことですが、実際にこの方法を利用して自己破産することなくローンを完済できた方もいらっしゃいます。

どうしても自己破産するのを避けたいという方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。

□自己破産の前に任意売却するメリット

1.同時廃止で済めば予納金や管財人との面談が不要

同時廃止とは、管財事件とは反対に管財人の弁護士が付かない破産手続きのことです。
同時廃止することができれば、予納金は必要ありません。
つまり、40万円の費用が浮くことになるので、費用的な負担を大幅に減らすことができます。
また、管財人との面談もありませんので、時間的・精神的な負担も大きく軽減できるでしょう。

2.競売を回避できる

自宅を残したまま管財人がつくと、自宅の処分方法は管財人と債権者が決定することになります。
そのため、任意売却したくても、競売で処分されてしまうかもしれません。

競売にかけられると、インターネットで公開されるためプライバシーの観点で問題が発生します。
また、引っ越し代を交渉することができなくなってしまいます。
先に売却しておけば、このようなリスクは避けられます。

3.売却代金に余裕があれば引っ越し代や最低限の生活費、破産費用に充てることができる

自宅を売却した代金は、住宅ローンや不動産担保ローンなどの自宅に抵当権がある債務の返済に充てられます。
その上で、余裕があれば余った資金を自己破産の申し立てをする際に依頼する弁護士の費用や最低限の生活費、引っ越し代などに充てることができます。

しかし、最低限の生活に必要なもの以外を購入するために使用したり、他人に譲渡したりすることはできません。
もし、このような行為が発覚した場合、自己破産が認められなくなります。

□自己破産の前に任意売却するデメリットと注意点

自己破産の前に任意売却をするメリットを紹介しましたが、デメリットと注意点を紹介します。

*管財事件になる可能性があるというデメリットがある

上記にも記載した通り、任意売却で得た代金は住宅ローンをはじめとする抵当権がある債務の返済に充てられます。
そこで、債務を完済しても資金が余った場合、その資金は資産とみなされます。
資産が残っていると、最終的には同時廃止が認められず、管財事件となる可能性があります。

*注意するべきことは?

・売却価格に注意する

自己破産の申し立てをする前に任意売却する場合、その価格が、適正かどうかが重要になります。
例えば、「2,000万円の価値のある家を1,000万円で親戚に売却した」となると、債権者からすれば本来の価値である2,000万円で売却していれば、さらに多くの債権を回収できます。

この場合、不当な財産隠しとなるため、後に取り消しされたり、自己破産が認められなくなったりする危険性があります。
そのため、売却価格には細心の注意を払いましょう。

・自宅を売却したからといって同時廃止が認められるわけではない

同時廃止の基準は、資産の有無だけではありません。
さまざまな基準があり、最終的に裁判所が総合的に見て判断します。

そのため、家を先に任意売却したからといって必ず同時廃止になるわけではありません。
中でも、会社経営者や個人事業主だった方は資産がなくても管財事件となる可能性が高いです。
地域によっても異なりますが、この点には注意しましょう。

・弁護士によって見解や方針が違う

弁護士によっては、自己破産を前提として自宅を先に売却することに難色を示す方もいます。
また、先に自宅を売却するのであれば、破産の依頼は受け付けないという方もいます。

しかし、あくまでこれは弁護士や倫理や考え方の違いなので、必ず正しいというものはありません。
ご自身の考え方と合致する弁護士を探すのが良いでしょう。

□まとめ

任意売却は、抵当権がついている不動産の処分の方法である一方で、自己破産は返済できなくなった債務処理方法です。
また、自己破産には同時廃止と管財事件の2つがあります。
管財事件になると手続きが複雑になるので注意が必要です。

それぞれの状況にもよって異なりますが、先に自宅を売却すれば、管財事件ではなく同時廃止となる可能性は高くなります。
また、競売を回避できたり、引っ越し代が確保できたりするメリットもあります。
しかし、財産隠しとみなされる危険性もあるので、その点については気を付けましょう。

この記事の監修者

株式会社セルフリジェネレーション広報部

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