住宅ローンを共有名義にするメリット・デメリットについて紹介します!

この記事の監修者

三好 海斗(みよし かいと)

株式会社セルフリジェネレーション 代表
宅地建物取引士
不動産賃貸経営管理士
既存住宅アドバイザー
1988年生まれの福島県出身。不動産業歴は14年。不動産賃貸・売買仲介をはじめ、投資用不動産、中古不動産仕入れ再販、中古不動産×リノベーションなど様々な不動産企業で経験を積み、自身でも自宅、投資用不動産等で5回不動産購入・売却を経験。2020年にセルフリジェネレーションを設立。2021年にメディア取材や自社サービスや取組みが各メディア(55社の媒体)へ掲載される。

住宅を購入する際、重要なのが住宅ローンです。
住宅ローンをどうするかによって、その後の日常生活を左右します。
もし、住宅ローンの組み方を失敗した場合、生活が苦しくなります。
せっかく購入するなら、その後も楽しい生活を送りたいですよね。
そのため、住宅ローンをどうするかは非常に重要なポイントです。
そこで、今回は住宅ローンについて見ていきましょう。
その中でも、「共有名義」にクローズアップし、メリットやデメリットについて紹介します。

□共有名義ってなに?単独名義との違いとは

「共有名義」という言葉の意味をあまり理解しきれていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、単独名義との違いがはっきり分からないという方も多いでしょう。
はじめに、「共有名義」と「単独名義」について紹介します。

「住宅ローンを共有名義にする」とは、夫婦2人に収入を合わせて住宅ローンの審査を通し、住宅ローンを2人の名義で組むことです。
住宅購入費用を2人で支払うことになるため、物件の所有権も共有となります。
不動産を購入する際、登記手続きを行いますが、費用の負担割合に応じて物件の持分を登記します。
例を挙げて詳しく紹介します。

例えば、3,000万円の物件を購入する場合、夫2,000万円、妻が1,000万円の負担をするローンを組むと、物件の共有持分は夫が2/3、妻が1/3となります。

共有名義の反対として単独名義がありますが、単独名義は住宅ローンを夫か妻が1人で契約し、物件の登記も1人の名義で登録します。

最近では、共働き夫婦が増加しているため、共有名義で住宅ローンを契約する家庭も増えています。
しかし、今後共働きではなくなる可能性があるなら、単独名義にしておく方が安心かもしれません。

□住宅ローンの組み方

住宅ローンには、共有名義や単独名義以外にもさまざまなパターンがあります。
どのような種類があるのかを見ていきましょう。

*連帯保証型

夫が住宅ローンの名義になりますが、妻が連帯保証人になり、妻の収入も合わせて審査を通す方法です。
債務者は夫のみなので、合算可能な妻の収入は半分程度ですが、妻は連帯保証人なので月々の返済義務を課せられない点はメリットと言えるでしょう。

しかし、住宅ローン控除を使用できるのは夫のみなので、注意が必要です。
もし、夫が返済困難な状況になったとき、連帯保証人である妻に返済義務が発生します。

また、名義人は夫となるため、不動産も夫の単独名義扱いとなり、妻に持分はありません。
団信に入れるのも夫だけなので、万が一、妻が亡くなった場合にもローンが残ります。
妻が将来仕事を退職する可能性がある、または契約社員やパートで安定性がなく、夫の収入だけで審査が通過しない場合は、連帯保証型の住宅ローンにすると良いでしょう。

*ペアローン

ペアローンは、1つの物件に夫婦各々が別の住宅ローンを組む方法です。
住宅ローンは2つになり、連帯保証人はお互い同士になります。

夫婦2人とも住宅ローンの名義人となるため、団体信用生命保険に加入することができ、2人とも住宅ローン控除を受けられます。
物件の共有持分についても、負担割合に応じて共有されます。

ペアローンのデメリットは、住宅ローンを2つ契約するため、手数料や契約の手間が2倍になることです。
ただし、返済期間や返済方法などは別々にすることが可能なので、2つのバランスを考慮すると良いでしょう。

妻に安定した収入がある、または仕事を辞める予定はないなどの場合は、ペアローンを選ぶと良いでしょう。

□住宅を共有名義にするメリット

ここでは、共有名義にするメリットを2つ紹介します。

1つ目は、住宅ローンの借入額を増やせることです。
例えば、夫婦で住宅を購入する場合、夫の年収300万円、妻の年収300万円なら夫の単独名義にしようとすると年収300万円に応じた金額しか借りることができません。

しかし、共有名義にすることで夫婦の年収を合算できるので、600万円に応じた金額を借りられます。
住宅ローンの審査でも年収600万円が基準となるため、審査に通りやすくなるでしょう。

2つ目は、所得税や住民税の軽減額が増えることです。
共有名義は借入金額が増えるだけでなく、住宅ローン控除を効果的に受けられるように利用することも可能です。
単独名義と共有名義では、どれくらい所得税や住民税の軽減額が異なるのでしょうか。
例えば、夫の年収が400万円、妻の年収が300万円の共働き世帯で、借入額3,000万円、金利1.49%、返済期間35年だとします。
持分割合が夫80%、妻20%だとすると、控除額の合計は約138.7万円となります。

住宅ローン控除は借入当初から13年間、年度末住宅ローン残高の0.7%を控除できます。
残高が3,000万円であれば21万円を控除できますが、所得税が21万円に満たない場合は所得税額が控除額の上限になります。
引ききれない分は住民税から控除されますが、支払う税金を上回る金額は戻ってきません。
所得が少ない人ほど控除額の枠を使用していないので、共有名義で妻も控除を活用すれば、世帯の控除額合計が増えるのです。

共有名義にすることによって、夫が亡くなり相続が発生した際、妻は夫の持分だけを相続します。
夫が単独名義で所有していた場合と比較すると、相続税評価額を抑えることができます。
しかし、配偶者の税額軽減制度などもあり、夫婦間の相続は課税されないことも多いので、節税のメリットがある方は限定されています。

□住宅ローンを共有名義にするデメリット

メリットがある一方、デメリットもあります。

1つ目は、不動産の処分や管理に他共有の同意が必要になることです。
共同で資金を出し、住宅ローンを購入すると、その不動産は「共有不動産」と位置付けられます。
共有不動産を管理・処分するためには、他共有者の同意が求められます。
どちらかが管理や処分行為に反対すれば、トラブルが起こることもあります。

処分や管理をする場合は、しっかりと話し合うことが大切です。

2つ目は、持分割合を出資割合に合わせないと贈与税が発生することです。
共有持分の割合を出資割合に合わせなかった場合、差額分に贈与税が発生します。
贈与税が発生するとさらにお金が必要になるので、共有持分の割合と出資割合のバランスはしっかり検討しましょう。

3つ目は、どちらかの収入がなくなった場合、返済が不可能になるリスクがあることです。
住宅ローンを共有名義にするということは、「2人で返済する」という意味です。
しかし、何等かの理由で仕事を失ったり、収入が下がったりすることも0ではありません。出産や入院、転職・退職などで収入が下がるとローン返済が苦しくなります。

そのため、月々の返済額に余裕を持てるような借入額を設定したり、貯金や保険などを準備したりしておくことをおすすめします。

□自分たちに合う住宅ローンの選び方

では、どの住宅ローンが最適なのでしょうか。
ここからは、妻の雇用形態別に合う住宅ローンの選び方を紹介します。

*専業主婦

専業主婦の場合は、夫の単独名義をする他に方法はありません。
どうしても共有名義にしたいという場合でも、妻名義で住宅ローンは組めないので、妻の資金から現金を出す方法に限られてしまうでしょう。

*パート社員

パート社員の場合、ペアローンの審査は通りません。
夫の単独名義か収入合算をするケースが好ましいです。

パート社員の妻の収入は夫の扶養内に収めている方が多いでしょう。
そのため、年収は100万ほどでしょう。
審査対象となる金額はもっと低いです。

収入合算をする場合、夫婦で負担を分け合うという認識ではなく、夫の収入の足りない分を補うという認識に近いです。

少しだけ予算が足りないというときには非常に有効な選択ですが、そのために妻が連帯債務者になるのが適切な判断なのかはしっかりと考える必要があります。

*正社員

妻が正社員の場合は、単独名義でも共有名義でも問題ありません。
しかし、夫の単独名義以外の方法を選ぶ場合は、現在働いている会社の産休・育休の取りやすさや女性の働きやすさが重要です。
これらの点が満たされていないと、本人の働く意志があっても働けなくなる可能性もあるからです。

産休や育休をしても職場復帰ができるのかという点はしっかりと見極めておくようにしましょう。
また、子供ができて、家庭に入りたいと考えるようになる方もいます。

ペアローンを選択し、妻の収入がなくなるというのは避けたいところでしょう。
収入合算をしても、妻の負担割合が大きい場合、妻の離職により年収負担率が非常に高くなるので、将来性をしっかりと考えた上で判断することをおすすめします。

□住宅ローンを共有名義で組む際の注意点

住宅ローンを共有名義で組む方は、注意するべきポイントがあります。

それは、毎月の返済額を抑えることです。
現在は共働きで収入が安定しているかもしれませんが、子育てや親の介護などで妻が仕事をやめなければならない状況になることもあります。

一般的には、年収に対し、年間返済額割合の理想は25%だとされています。
例えば、年収500万円だと125万円、月に換算すると約10万4,000円です。

この他にも修繕費や設備の交換費用、固定資産税などのランニングコストも必要になるため、余裕を持った返済額を設定することをおすすめします。

共有名義の住宅ローンを借りる方は、妻が働くことができなくなったときのことを考慮し、毎月の返済額が高くなりすぎないように気を付けましょう。

□まとめ

住宅ローンを共有名義で組む場合、妻の妊娠や出産などで収入が減った場合、リスキーな状態に陥ってしまいます。
そのため、共有名義にする場合はその後のライフプランやキャリアプランを夫婦でしっかりと話し合い、考えておく必要があります。
何が起こるか分からないため、「共有でローンを組む方法でしか家を購入できない」という場合でなければ、夫の単独名義で組む方が安心かもしれません。
もちろん、共有名義にすることで控除額や借入額を増やせるというメリットもあるので、夫婦の形に合った方法を選んでくださいね。