相続登記・住所変更登記義務化いつから?法改正のポイントやペナルティも

この記事の監修者

三好 海斗(みよし かいと)

株式会社セルフリジェネレーション 代表
宅地建物取引士
不動産賃貸経営管理士
既存住宅アドバイザー
1988年生まれの福島県出身。不動産業歴は14年。不動産賃貸・売買仲介をはじめ、投資用不動産、中古不動産仕入れ再販、中古不動産×リノベーションなど様々な不動産企業で経験を積み、自身でも自宅、投資用不動産等で5回不動産購入・売却を経験。2020年にセルフリジェネレーションを設立。2021年にメディア取材や自社サービスや取組みが各メディア(55社の媒体)へ掲載される。

令和6年4月1日より、相続登記・住所変更登記が義務化になることをご存知ですか?
施行後、相続登記・住所変更登記をしないで放置してしまうと、金銭的なペナルティが発生する場合もあります。

とはいえ、そもそもなぜ義務化になるのか、改正前と改正後で何が変わるのか、イメージできない方もいるでしょう。

そこで今回は、相続登記・住所変更登記義務化について分かりやすくご紹介!

法改正のポイントやペナルティ、改正前に準備することなど詳しく解説いたしますので、ぜひ参考にしてくださいね。

相続登記・住所変更登記義務化はいつから施行?目的や背景は?

「相続登記」とは、亡くなった人が所有していた不動産の名義を、相続人に変更する手続きのことです。

これまで、相続登記はもちろん、所有者が転居した際も住所変更の登記は義務化されていませんでした。

しかしそれにより、所有者が分からない土地が増加し続けたり、所有者が分かっても連絡がつかなかったりという問題が多く発生。

国や自治体が公共用地として利用できなかったり、災害対策をスムーズに進められなかったりといったことが問題視されるようになりました。

これらの問題を解決すべく、令和3年4月に国会で「相続登記等の義務化に関する法案」が成立し、令和6年4月1日から施行されることが決定しました。

日本にはどれくらい所有者が分からない土地が存在するの?

ちなみに日本では、所有者が分からない土地「所有者不明土地」が数多く存在しています。

平成28年に行なわれた国土交通省の「地籍調査」によると、登記簿上で所有者が確認できない土地が約20%あることが分かりました。

さらに詳しい調査の結果、最終的に所在不明な土地が0.41%あり、そのうち相続登記されていない土地が約66.7%、住所変更登記されていない土地が約32.4%あると判明しました。

参考:国土交通省 所有者不明土地の実態把握の状況について‐H28年度地籍調査における土地所有者等に関する調査 https://www.mlit.go.jp/common/001201304.pdf

相続登記・住所変更登記義務化 -改正前と改正後で何が変わる?

相続登記と住所変更登記が義務化になるといっても、改正前と改正後では何が変わったのかイマイチ分からない方もいるのではないでしょうか?

そこで具体的に何が変わるのか、登記手続きに必要な費用や書類、ペナルティについて詳しくご紹介していきます。

相続登記が任意から義務化される

前述したように、これまでは相続登記に期限は設けられていませんでした。

しかし法改正後は、相続の開始もしくは所有権を取得したことを知った日から、3年以内に相続登記しなくてはなりません。

相続人に対して、遺言などの遺贈で所有権を取得した場合も同じ扱いになります。

相続登記の申請費用や必要書類は?

相続登記する際にかかる費用は以下のとおりです。

(司法書士に依頼した場合は別途費用が発生します。)

・登録免許税

・必要書類の取得費用(1通あたり約300円~)

・申請する際や必要書類を取得する際に発生する郵送費

※相続人が名義変更をしないで亡くなった場合は、名義変更の際の登録免許税は課されない措置もあるようです。(平成30年4月1日~令和4年3月31日の間の登記のみ)

登録免許税は、不動産の「固定資産評価額」に0.4%の税率を掛けたものになります。

具体的な費用は、以下の表をご参考にしてください。

固定資産評価額(不動産の価値)登録免許税(相続登記の際にかかる費用)
500万円2万円
1,000万円4万円
2,000万円8万円
3,000万円12万円
4,000万円16万円
5,000万円20万円
8,000万円32万円
1億円40万円

相続登記の際は、以下のような書類が必要になります。

・亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡まで)

・住民票除票

・相続人全員の戸籍謄本

・相続人の住民票

・固定資産評価証明書

なお、事案によって必要書類は変わってくるので、詳しくは法務局や司法書士に確認しましょう。

相続登記をしないとどうなるの?

冒頭にもお伝えしたとおり、施行される令和6年4月1日以降、相続登記をしないで放置すると違反とみなされ、10万円以下の過料に処される可能性があります。

相続の開始もしくは所有権を取得すると知った日から、3年以内に相続登記しないと過料対象となるので注意が必要です。

すぐに相続登記ができない場合はどうしたらいいの?

複数人で共同相続する場合など、なかなか話がまとまらず、3年以内に相続登記できないという方も中にはいるでしょう。

その場合は、登記官に相続人である旨を申出ることで、登記義務が先延ばしになるようです。

詳しくは、法務局にお問い合わせください。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki1.html

住所変更登記が任意から義務化される(改正前の住所変更も対象)

法改正後は、相続登記の義務化に伴い、住所変更登記も任意から義務化されます。

所有者の氏名や住所などで変更があった場合は、変更から2年以内に、変更登記を申請する必要があります。

住所変更登記の申請費用や必要書類は?

住所変更登記の際に必要となる費用は以下のとおりです。

(司法書士に依頼した場合は別途費用が発生します。)

・登録免許税(不動産の個数×1,000円)

・住民票など必要書類の取得費用(1通あたり約300円~)

・住所変更登記を申請する際や必要書類を取得する際に発生する郵送費

また、住所変更登記には、以下のような書類が必要になります。

・登記名義人住所・氏名変更登記申請書

・不動産の家屋番号や地番がわかるもの(登記済権利証・登記事項証明書など)

・住所変更の事実がわかる書類(住民票・戸籍の附票など)

ただし以下の表のように、理由によっても必要な書類は変わってきます。

住所変更登記が必要な理由必要になる書類
転居で住所が変更したケース住民票もしくは戸籍の附票
2回以上転居したケース戸籍の附票
町名や番地が変わったケース住民票もしくは町名番地変更証明書
住居表示が実施されたケース住民票もしくは住居表示実施証明書

住所変更登記をしないとどうなるの?

相続登記と同じく、施行される令和6年4月1日以降、住所変更登記の申請を怠った場合は、5万円以下の過料に処される可能性があります。

正当な理由がないにも関わらず、2年以内に登記申請を怠った場合、過料対象となるので注意しましょう。

改正前の住所変更も対象となるので注意!

注意点として、義務化前の住所変更も申請の対象となります。

とはいえ、ルールとしては変更から2年以内に変更登記をする必要がありますが、施行前に変更があった場合は、過去のことなのでどう頑張ってもルールを守れません。

そのため、住所変更日が施行日より前の場合は、施行日から2年以内に住所変更登記をすれば問題ないようです。

施行日以降に住所変更があった場合は、変更日から2年以内に登記変更が必要になります。

相続登記をするメリット

ここまで、相続登記や住所変更登記の義務化についてお伝えしましたが、相続登記をするメリットも知っておきましょう。

相続登記をする一番のメリット、それは「自分の権利が守られること」です。

たとえば、相続人が複数いる中で、遺言や遺産分割協議により自分が不動産を相続できたとします。

ところが相続登記をしていないと、「自分のものです」という主張ができなくなってしまう可能性があるのです。

また、相続登記を長期間怠った場合、配偶者や子どもの協力を得る必要があるなど、手続きの手間が増えるリスクも十分考えられます。

ある程度、手間と費用はかかりますが、相続登記は一生のうちに何度も経験することではないですよね。

施行されてから慌てることがないように、相続登記に向けて早めに動くことをおすすめします。

相続登記・住所変更登記義務化前に準備しておくべき2つのこと

相続登記・住所変更登記の義務化まで、まだ時間はあるとはいっても、施行開始後にバタバタと準備に追われたり、「うっかり忘れていて過料のペナルティが発生…」となったりすることは避けたいですよね。

そのため、義務化に向けて今からできることを2つご紹介します。

①登記に必要な戸籍を集めて相続人を把握する

まずは、相続登記に必要な戸籍を集めることからはじめましょう。

相続登記に必要となる戸籍は、使用期限がないため、施行後すぐに使えるように集めておくのがおすすめです。

また、事前に戸籍を集めておけば、遺産分割協議をすべき相続人も把握できるので、義務化してからスムーズに話を進められるメリットもあります。

②亡くなった方が所有していた土地を確認する

亡くなった方が所有していた土地を、事前に確認しておくことも大切です。

特に、長い期間に渡って相続登記を放置している場合は、亡くなった方がどの土地を所有していたかすぐに判別するのは難しい場合も。

また、相続登記の土地を確認する際は、以下のような書類が必要になります。

・登記済書(権利証)

・名寄帳

・登記簿

・固定資産納税通知書

これらの書類も義務化後に使用可能です。

直前だと取り寄せるのに時間がかかったりバタバタしてしまったりするので、今から余裕を持って準備をして、スムーズに手続きを進められるようにしましょう。

相続登記・住所変更登記義務化に向けて早めに対策をとろう!

相続登記・住所変更義務化について、改正のポイントやペナルティなど詳しく解説しました。

繰り返しになりますが、大切なポイントをまとめてみました。

令和6年4月1日から「相続登記・住所変更登記の義務化」が施行する

・相続の開始もしくは所有権を取得すると知った日から、3年以内に相続登記しないと10万円以下の過料が処される可能性がある

・住所変更から2年以内に変更登記をしないと5万円以下の過料が処される可能性がある(施行前に変更した場合も適用となり、施行開始から2年以内に申請の必要あり)

相続登記・住所変更登記は、「過料のリスクを避けるために申請する」というのはもちろんですが、何よりも自分の権利(所有権)を守るために大切なことです。

直前になって慌てることがないように、今回の内容を参考にして、早めに対策をとりましょう。

弊社では土地や建物に関する、さまざまアドバイスを行っております。

もしもお困りの方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。