土地を相続し、売却した場合、確定申告が必要か分からずお困りの方は多いのではないでしょうか。
相続で取得した土地を売却した際は、譲渡所得の有無によって確定申告が必要かそうでないかが変わります。
また、そもそも確定申告についてよく分からないという方もいらっしゃると思うので、今回は基本的なことから、確定申告の方法までを解説します。
これから相続した土地を売却したいとお考えの方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
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□確定申告の概要
確定申告について、まだきちんと理解できていない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まず、確定申告について解説します。
事業所得や給与などの収入には、所得税が課せられます。
そのため、その年の所得をすべて計算し、税務署に申告しなければなりません。
この手続きが確定申告です。
会社に勤めている方であれば、会社が毎月の給料から所得税を源泉徴収し、代わりに納税をしてくれます。
そのため、原則確定申告をする必要がありません。
しかし、概算で天引きしているため、過剰に払いすぎていたり、足りなかったりする場合があるので、それらを0にする年末調整をする必要があります。
確定申告には、期間が定められており、基本的には2月16日から3月15日となっています。
もし、期日までに申告しなかった場合には、附帯税が課せられます。
附帯税には、主に無申告加算税と延滞税の2つの税金がかかります。
期日を過ぎれば過ぎるほど、税額が増えていく仕組みです。
本来納税する金額に加え、さらに税金を支払うことになるため、必ず期日を守って納税するようにしましょう。
□土地相続で確定申告が必要なケース
確定申告について解説しましたが、不動産や土地を相続した場合は、基本的に所得税は発生しないため、確定申告は不要です。
しかし、場合によっては必要になるケースが4つあります。
・相続した不動産を売却したケース
・不動産を現金化してから相続したケース
・賃貸物件をはじめとする収入が発生する不動産や土地を相続したケース
・相続した不動産を寄付したケース
相続した不動産を売却したり、現金化してから相続したりした場合、所得として扱われます。
そのため、所得税の納税、確定申告をしなければなりません。
不動産を売却した価格から取得費用と必要経費を差し引いた売却利益に税率を掛けた額が納税額に当たります。
また、アパートやマンション、駐車場など収入を発生させる賃貸物件や土地を相続したケースにおいても、確定申告が必要です。
相続した日以降に発生した収入に対して所得税が課されるため、納税と確定申告を忘れず行いましょう。
相続した不動産を国や自治体に寄付した場合は、控除を受けるために確定申告をした方が良い可能性もあります。
条件を満たし、寄付金控除の対象になれば節税することができるので、予め確認しておきましょう。
□土地相続の売却で確定申告が不必要なケース
土地を相続し、売却した際でも確定申告が不要になることがあります。
それは、売却益である譲渡所得が発生しなかったときです。
譲渡所得は、売却価格から取得費、譲渡費用を差し引いて残った利益のことを指します。
利益が発生しなかった場合は、譲渡所得がないため確定申告をする必要はありません。
ただし、確定申告が不要な場合においても、税務署から「お尋ね」が送られることがあります。
税務署は、登記簿の記録から不動産の売買があったことを認知しています。
そこで、譲渡所得が発生しなかったのか、申告をしていないのかをチェックする必要があります。
「お尋ね」が送付された際は、封筒の中に入っている書類に必要事項を記入し、返送しましょう。
□相続した土地を売却したときに課せられる税金
相続した土地を売却する際、さまざまな税金がかかります。
*登録免許税
土地の名義変更を行う際、登録免許税が発生します。
登録免許税は、登記内容を変更するときに法務局に支払う税金です。
相続における名義変更の登録免許税は、「固定資産税評価額×0.4%」で計算できます。
固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書に記載されている価格のことを指します。
また、相続が理由となる所有権移転登記の税率は0.4%と決められています。
*印紙税
土地売却では、印紙税も課せられます。
不動産の売買契約書は、課税文書という印紙を貼る必要がある書類のため、売買代金に応じて印紙を貼付しなければなりません。
*譲渡所得にかかる所得税・復興特別所得税・住民税
土地売却で譲渡所得が発生した場合は、所得税や復興特別所得税、住民税が課せられます。
以上のように、土地を売却する際には複数の税金がかかるため、しっかり把握しておきましょう。
□相続後の土地の売却で適用される特例や控除
土地の売却にはさまざまな税金がかかるとお伝えしました。
しかし、相続後の土地売却では特例や控除があります。
これらを利用することで、税額を軽減できますので、要件を確認しましょう。
*取得費加算の特例
この特例は、相続税申告時に納付した相続税の一部を譲渡所得の算定をする際に、取得費として加算することができるものです。
取得費に相続税の一部を加算することで、譲渡所得を減らせるため、譲渡所得税と住民税の税額を少なくできる可能性があります。
相続をする際に相続税を納付している方で、その後土地を売却する方は難しい条件もないので、非常に使いやすい特例です。
なお、「相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却していること」が条件なので、売却するタイミングには注意が必要です。
*相続空き家の3,000万円控除
この控除は、平成28年度税制改正によって創設された比較的新しい制度です。
相続で取得した空き家を耐震リフォーム後に売却したり、空き家を取り壊して更地にしてから売却したりした場合、譲渡所得から3,000万円まで控除できます。
この控除制度は、空き家を少しでも減らすために作られた制度なので、被相続人が亡くなった時点で一人暮らしである場合に限定されています。
また、先ほどの取得費加算の特例と併用できないため、どちらか1つを選ぶ必要があります。
さらに、さまざまな適用条件や必要書類があるので、専門家に相談して決めるのが良いでしょう。
*併用できる控除や特例(自己住居用の土地と建物を売却するケースにおいて)
取得費加算の特例と相続空き家の3,000万円控除は、これから紹介する住宅関連の控除・特例と併用できます。
1.自己居住用財産を譲渡した際の3,000万円控除
マイホームを売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円まで控除可能な特例です。
相続空き家の3,000万円控除と併用するなら、2つの控除を合わせて上限3,000万円までが対象です。
2.自己居住用財産の買換え等に係る特例措置
この特例では、以下の特例と併用可能です。
・特定の居住用財産を買換えする際の長期譲渡所得の課税の特例
・特定の居住用財産を交換した際の長期譲渡所得の課税の特例
・居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
□土地売却における確定申告をする方法
最後に、相続した不動産や土地を売却した際の確定申告の方法を紹介します。
確定申告には大きく4つのステップがあります。
必要書類を揃えたり、納税方法を選んだりするのに時間がかかり負担に感じるかもしれませんが、1つずつ丁寧に進めていけば問題ありません。
以下で詳しく流れを解説します。
1.必要書類を用意する
最初に申告に必要な書類を用意します。
確定申告書の用紙や譲渡所得の内訳書は、税務署かインターネット上で入手できます。
その他、売却時の契約書や領収書などはコピーで問題ありません。
不動産の全部事項証明書は法務局で手に入れられますが、オンラインで申請することもできます。
必要書類は以下の通りです。
・確定申告書
・確定申告第三表
・譲渡所得税の内訳書
・不動産売買契約書のコピー
・譲渡のためにかかった費用の領収書
・取得費が分かる契約書のコピー
・不動産の全部事項証明書
用意するのに時間がかかるものや複雑な書類があるので、余裕を持って準備するようにしましょう。
2.申告書を作成する
不動産売買契約書を確認しながら、譲渡所得内訳書に不動産の所在や譲渡価額などを記入していきます。
確定申告書は、源泉徴収票や譲渡所得内訳書を見て、第一表から第三表まで記入します。
また、国税局のホームページ上にある「確定申告書等作成コーナー」から申告することもできます。
マイナンバーカードを持っている方は、マイナンバーカードをスマホで読み取ることでパソコンやスマホでe-taxを使用することができますので、試してみてくださいね。
どちらも用意できない場合は、作成した申告書を郵送で提出することもできるので、ご自身に合った方法で提出しましょう。
3.申告書を提出する
申告書の提出先は、納税地の所轄税務署です。
提出方法は、税務署に直接足を運んで提出するか、郵送、国税電子申告、納税システムで申告する方法があります。
4.納税する
納税方法は、いくつかの方法があり、自分で選ぶことができます。
具体的には、金融機関または税務署の窓口で現金で納付する方法、振替納税、e-taxやQRコードを使用してコンビニで納付する方法があります。
また、専用のwebサイトからクレジットで納付する方法もあるので、ご自身がやりやすい納税方法を選択してください。
以上が確定申告の方法です。
最初にお伝えしたように、期間内にできなかった場合はさらに税金がかかるため、余裕を持って準備しましょう。
□まとめ
相続した土地を売却したとしても、譲渡所得が発生していなければ確定申告をする必要はありません。
反対に、譲渡所得が発生した場合は、必ず確定申告を行いましょう。
確定申告には、複数の書類が必要です。
書類を揃えるのにも時間がかかるため、期日までに間に合うように余裕を持って進めていきましょう。
また、特例や控除についても紹介しましたので、ご自身が適用できる特例や控除を確認し、節税できるように工夫すると負担も軽減できるでしょう。