空き家にかかる固定資産税は6倍になる!?税金対策は?

深刻化している日本の空き家問題。
少子高齢化の進行により、今後もさらに空き家問題が加速すると考えられています。
最近では、社会問題として取り上げられることも増え、国や自治体が解決に向けてさまざまな取り組みを考えています。
空き家にはさまざまな税金がかかり、特に固定資産税の支払いに悩まされている方もいらっしゃるでしょう。
そこで、今回は空き家を所有している方に向けて、空き家にかかる税金や固定資産税の対策について紹介します。

□空き家にかかる税金は?

誰も使用していない空き家でも、4つの税金がかかってしまいます。

1つ目は、固定資産税です。
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物、償却資産を所有している際に課されます。
固定資産税は、「課税台帳に登録されている価格×税率1.4%」で計算されます。
課税台帳に登録されている価格は、空き家の所在地を管轄している都税事務所や役場などで確認できます。

2つ目は、都市計画税です。
都市計画税は、1月1日時点に都市計画区域内で市街地区域に土地や建物を所有している際に発生する税金です。
都市計画税は、特定空き家に指定されていない空き家なら一定の軽減税率を受けられることもあるので、一度確認してみましょう。

3つ目は、相続税です。
空き家を相続すると、その空き家に相続税が課されます。
相続税は「課税遺産総額×自身の相続分×相続分に応じた税率-控除額」で計算できます。

4つ目は、所得税です。
空き家を売却した場合に、所得税が発生します。
所得税は、「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」で計算できます。

□空き家の固定資産税を滞納したらどうなる?

空き家にかかる税金について紹介しましたが、固定資産税を払えず滞納してしまった場合、どうなるのでしょうか。

もし、固定資産税の請求を無視し続けた場合、延滞金が発生します。
固定資産税の延滞金の利率は、滞納日数が1ヶ月未満か1ヶ月以上かで異なります。
滞納期間が長ければ長いほど、滞納金は高くなります。

長期間にわたって滞納した場合は、最終的に財産を差し押さえられます。
預金や給与だけでなく、不動産や自動車などの現金化できる資産も差し押さえの対象となります。

しかし、差し押さえは自治体の最終手段です。
滞納をしていても窓口に相談すれば分割納付などの対応をしてくれることもあるので、支払いが難しくても、まずは自治体の納税課に相談しましょう。

□空き家の固定資産税対策

利用していない空き家によって資産が減るのは誰もが避けたいと思うでしょう。
そこで、固定資産税対策を行うことをおすすめします。

1つ目は、親族に貸す方法です。
親族の信頼できる方に住んでもらうことで、空き家という位置付けはなくなります。
また、維持管理を任せることもできるので、空き家が荒れてしまう心配もありません。
また、家賃として固定資産税相当分を支払ってもらうことで、固定資産税の負担も軽減することが可能です。

まずは、親族に貸して、ゆっくりどうするかを考えるのも良いでしょう。
相続で空き家になった場合は、親族会議をし、住む人や管理者を決めておくことをおすすめします。

2つ目は、空き家をそのまま賃貸物件として貸し出す方法です。
空き家を貸し出すメリットとしては、人が住むことによって建物が傷むことを防げることです。
家賃収入を固定資産税の支払いに回せますし、低所得者用の賃貸として貸し出すと、「家賃低廉化補助制度」という補助金制度を利用できます。
この制度は、国や自治体から月額4万円を最長で10年間受けられる制度です。
そのため、固定資産税の負担を大きく軽減することができるでしょう。

一方、デメリットもあるのも事実です。
それは、物件管理や入居者のトラブル対応などの手間があることです。
それだけでなく、初期投資としてリフォームの費用がかかる場合もあります。
工事内容次第では、1000万円以上かかることもあり得ます。

もし、入居者が現れなかった場合は、リフォーム費用を回収できないまま空き家の維持管理や固定資産税などの支払いを続けることになります。
そのため、しっかりと検討した上で賃貸にするか、しないかを決めると良いでしょう。

3つ目は、空き家をそのまま売却する方法です。
すぐに空き家を売却したい場合は、売却すると良いでしょう。
売却のメリットは、固定資産税の支払いがなくなることです。
また、高く売れる場合は利益も得ることができます。
売却によって得た利益に対して課される税金も、相続から3年以内の売却であれば「相続空き家の3,000万円特別控除」を適用して節税することも可能です。

しかし、空き家が人口の少ない地方などにある場合は、売却できるまで時間がかかることを覚悟する必要があります。
売却をする際は、不動産会社に一度相談してみましょう。

□「特定空き家」に指定されると固定資産税は高くなる!?

固定資産税対策について紹介しましたが、反対に、固定資産税が高くなることもあります。
それは、「特定空き家」に指定された場合です。
特定空き家に指定された場合、固定資産税が6倍にも膨れ上がります。

全国に空き家が増加することにより、周囲の生活環境が悪くなるだけでなく、家屋が倒壊したり、火災が発生したりするなどの危険性が高くなります。
そこで、平成27年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が施工され、空き家への対策が一層強化されました。

では、どのような空き家が特定空き家に指定されるのでしょうか。
具体的には以下の通りです。
・倒壊するなどの保安上危険になる恐れがある
・衛生上有害になる恐れがある
・管理がされておらず、景観を損なっている
・周囲の生活環境の保全を保つため、放置することが不適切である

このような場合には特定空き家に指定される可能性が高いので、注意しましょう。

*もし、特定空き家に指定されてしまったら?

特定空き家に指定された場合、まず自治体から「助言・指導」が行われます。
これによって状況を改善できれば指定は取り消されますが、改善されなかった場合は「勧告」をされます。
そして、住宅用地特例の対象から外され、翌年以降の固定資産税が大幅に増えることになります。

それでも放置し続けた場合には、「命令」に切り替わり、従わなかった場合、50万円以下の罰金が科されることになります。
最終的には自治体が空き家を取り壊し、その費用を所有者に請求する「行政代執行」に切り替わります。

特定空き家に指定されてしまった場合は、できるだけ早く状況を改善するようにしましょう。

□特定空き家にならないためにするべきこと

*空き家のままにしない方法

空き家を中古物件として売却するか、貸し出す方法があります。
先ほども紹介したように、相続した空き家を売却する場合は、3,000万円の特別控除があります。
しかし、2023年12月31日までとなっているので注意しましょう。

また、空き家を解体し、更地にする方法もあります。
ただ、更地にすることによって固定資産税が増加してしまうので、増加分を負担できる活用方法を見出す必要があります。
解体費用も必要になるので、しっかりと検討しましょう。
しかし、地域によっては更地にした方が売りやすいという場合もあるので、不動産会社に相談してみましょう。

*空き家のままにする方法

空き家のままにするなら、まずは自分で管理することが重要です。
しかし、あまりにも遠方に空き家がある場合は、交通費や手間がかかるので、現実的ではないこともあるでしょう。
ただ、これらは「本来必要となる費用」なので、他人や管理業者に任せる場合の費用と比較検討してみましょう。

空き家になったばかりであれば、親戚や知人に任せるのも問題ありません。
長期になるなら、管理に必要な費用や報酬が必要です。
しかし、家の管理についてきちんとした知識がないので、完全に任せることは避けましょう。
どのように管理してほしいかを細かく伝えるようにしましょう。

親戚や知人に管理を頼むことができない場合は、専門の管理業者に依頼するのも1つの手です。
費用は少しかかりますが、空き家管理のプロに任せることで、安心することができるでしょう。

□すべての空き家で、固定資産税の優遇がなくなってしまう?

2022年12月、空き家税軽減特例を外し、税額が4倍になるというニュースがありました。
空き家に対する増税で、税額が4倍になる税金は、固定資産税です。
固定資産税が4倍になるのは、大きな負担となってしまうでしょう。

実は、この取り組みは、神戸市が2021年にすでに行っていました。
空き家が建っていれば固定資産税が軽減されますが、費用をかけて更地にすることによって固定資産税をさらに支払わなければならないため、空き家を放置する人が増えてしまいました。
そこで、神戸市は空き家の所有者に空き家の軽減措置を撤廃し、空き家を改修して住めるようにしたり、新たな土地の活用方法を模索したりという行動をする人が増えるようにしたのでしょう。

そして、国も神戸市と同じような取り組みをすることになりました。
固定資産税を少しでも節約するために、空き家を放置していた方ももちろんいらっしゃるでしょう。
しかし、もしこの施策が現実になるなら、空き家の所有者は空き家の行方を考える必要があります。
そのため、現在空き家を放置し続けている方は、空き家をどうするか、しっかりと検討することをおすすめします。

□まとめ

固定資産税をはじめ、空き家にはさまざまな税金が課せられます。
空き家は管理が重要で、きちんと管理がされていない場合は特定空き家に指定されてしまいます。
特定空き家に指定されると、税金の負担がさらに大きくなります。
最近では空き家が原因で起こった事件や火災などのトラブルも増加しているため、国や自治体もさらなる改善に乗り出しています。
特定空き家の指定を避けるためにも、空き家を放置せずしっかりと管理を行うようにしましょう。

この記事の監修者

三好 海斗(みよし かいと)

株式会社セルフリジェネレーション 代表
宅地建物取引士
不動産賃貸経営管理士
既存住宅アドバイザー
1988年生まれの福島県出身。不動産業歴は14年。不動産賃貸・売買仲介をはじめ、投資用不動産、中古不動産仕入れ再販、中古不動産×リノベーションなど様々な不動産企業で経験を積み、 株式会社セルフリジェネレーションを設立。2021年にメディア取材や自社サービスや取組みが各メディア(55社の媒体)へ掲載される。